そもそもストレス頭痛とは
日本人の3人に1人が苦しんでいるとされる頭痛ですが、ストレスが原因で起きる「ストレス頭痛」は、命には直接かかわらないまでも生活に多大な影響を及ぼします。ここでは、あなたが抱えるストレス頭痛の解決法をご紹介します。
医師の髙田女里さんによると、頭痛には病気が原因で起きるもの(二次性頭痛)と原因となる病気がなくても起きるもの(一次性頭痛)の2種類があり、ストレス頭痛は一次性頭痛に分類されます。
頭痛は、頭全体が痛むものから部分的に痛みが集中するものまで、ズキンズキンと拍動を感じるような痛みから漠然とした痛みまでさまざまです。頭蓋骨の中にある「脳みそ」と呼ばれる部分(脳実質)は痛覚がないため、たとえ触られたとしても痛みはありません。頭痛は脳の直接的な痛さではなく、脳の血管などに刺激や炎症があった場合や、筋肉や神経に異変があった場合に痛覚のある部位へと伝えられることで生じるものです。
ストレス頭痛(緊張型頭痛)が発症するメカニズムは完全には解明されていませんが、大きな引き金となるのは、家庭内のトラブルや「会社の仕事がうまくいかない」「人間関係に問題がある」などの心配や悩み、苦痛を抱えることで生じる社会的ストレスや精神的ストレスとされています。
また、社会的ストレスや精神的ストレスに影響し、ストレス頭痛を引き起こす原因となる身体的ストレスには、「デスクワークやパソコンの操作で長時間前かがみになる」「車の運転で同じ姿勢が続く」「猫背姿勢」「毎日使う枕が合わない」といった習慣によって、首や肩などにかかるストレスがあります。
頭痛に悩んでいる人の原因の多くがこのストレス頭痛とされ、子どもと大人、男女に関係なく起きます。ストレス頭痛は「稀発反復性緊張型頭痛」「頻発反復性緊張型頭痛」「慢性緊張型頭痛」の3つに分かれます。
【稀発反復性緊張型頭痛】
1カ月に1日未満の頻度で起きる頭痛
【頻発反復性緊張型頭痛】
1カ月に1日以上15日未満の頻度で起きる頭痛
【慢性緊張型頭痛】
3カ月を超えて、平均して1カ月に15日以上(年間180日以上)起きる頭痛
稀発反復性緊張型と頻発反復性緊張型は30分~7日間持続する頭痛ですが、慢性緊張型は数時間~数日間、または絶え間なく持続する頭痛です。痛みの部位は左右に偏ることなく、両側や後頭部、頭部全体など。痛みの種類は、頭にリングをかけて締めつけられるような激痛から漠然とした重苦感までさまざまです。時に、めまいや軽い吐き気などがあります(稀発反復性緊張型と頻発反復性緊張型は吐き気なし)。
ストレス頭痛とその他の頭痛の見分け方
頭痛は、さまざまな原因や痛みの微妙な差によって分類されますが、ストレスが原因のストレス頭痛を見分けるには、以下の2つの頭痛の特徴を知ることが必要です。
【片頭痛】
片頭痛は以前、血管が拡張して緩むことで生じるとされていましたが、この「血管説」以外に、現在では「神経説」や「三叉神経血管説」が唱えられています。
有力なのが三叉神経血管説で、これは脳実質(脳みそ)を包む硬膜の炎症と血管の収縮・拡張によって片頭痛が起きるという考え方です。何らかの原因によって、硬膜動脈などに分布している三叉神経終末から炎症性神経伝達物質が放出されて局所の炎症をきたし、痛みや吐き気などの原因になるとされています。ただし、片頭痛の病態は完全に解明されていないのが現状です。
片頭痛は緊張時ではなく、逆に緊張が緩んだリラックス時にズキンズキンと激しい脈打ちのような痛みが起きることが多いようです。拍動性の頭痛が起きない場合もあり、動くことができずに寝込んでしまうほど症状がひどくなることもあります。
におい、音、光、チーズやナッツ、チョコレートなどの食品類、赤ワインなどのアルコール類、激しい運動、寝すぎ、高血圧などがきっかけで発作が起き、慢性片頭痛ではない片頭痛の中で「前兆のない片頭痛」の場合は4時間~3日程度続きます。
ストレス頭痛との違いは、片頭痛には多くの場合、頭痛発作の前兆がある点です。視界が欠けて見えたり、ギザギザと鋭い光が見えたりすることもあります。
【群発頭痛】
ある時期に集中して起きる群発頭痛は、目の裏側に走っている血管が何らかのきっかけで拡張し、神経を刺激することで発症するとされています(視床下部に発生原因があるとする説や三叉神経の過剰興奮が原因とする説も)。約1カ月間、同じ時間帯に毎日起き、ストレス頭痛との違いは、痛みが片側に出現し目の奥がえぐられるような痛みを伴う点。人によっては痛みのある方の目が充血したり、涙目になったりします。
ストレス頭痛をなくすには
【治療】
繰り返す痛みに耐えられなければ、薬に頼るのが一つの方法。病院で診察を受けてから処方される薬剤は、主にアスピリンやイブプロフェンなどです。また、筋肉の緊張が強いと判断された場合、チザニジンやエペリゾンなどに筋肉をほぐす効果があります。ストレスが多く心身の疲れが大きい場合は、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンを増やす、パキシルなどの抗うつ薬が効果的です。
薬はメリットが大きい半面、必ずデメリットがあるのが特徴で、鎮痛剤のアスピリン(非ステロイド性抗炎症薬)などは反復性のストレス頭痛には効果的ですが、慢性型には効果があまり出ないことも。また、これらの飲み薬は胃に負担をかけるため、胃薬などを一緒に飲む必要があります。
薬以外にも、首や肩などの温熱療法、電気療法、酸素療法、マッサージ、運動療法などさまざまな分野の治療法があります。
【自己対策】
頭痛がどれほどつらいかは、痛みを持つ本人しかわかりません。つい薬に頼ってしまいがちですが、ストレス頭痛の原因を少しずつ改善していくことも大切です。もちろん原因であるストレスは目に見えるものではないため、自己コントロールも容易ではありません。しかし、自己と向き合うことが治療の第一歩と言えるでしょう。
まずは、どのような問題を抱えているのかを考える余裕と時間が必要です。いつもよりも5分早起きし、いすに座る時間を持つことで、焦り過ぎて先走る考えに少しブレーキをかけましょう。ホッとできる飲み物でリラックスタイムを過ごし、ボーッとすることも効果があります。
緊張は、心だけではなく日常における肉体的な癖からも生じます。仕事でデスクワークや運転をする人は、座る姿勢を「骨盤を立てた姿勢」へと正すとともに、目や首周りを時々休養させることが大切です。肉体的なコリをほぐす時間も必要。シャワーではなく入浴をすることで、筋肉をほぐしたり血行を改善したりできます。運動は健康管理につながり、ストレス発散に効果的です。
まとめ
「ストレス頭痛は、痛みの改善はもちろんですが、まずは生活習慣や自分の性格を見直すことが最重要です。思い当たるフシがある人は栄養状態や睡眠状況を正すことから始め、心も体もリラックスさせて気持ちをクリアにし、適度に体を動かすことが頭痛を治すための第一歩と言えるでしょう」(髙田さん)
(オトナンサー編集部)
髙田女里(たかだ・めり)
医師(形成外科)・医学博士(法医学)
1980年8月15日生まれ。慶応義塾大学法学部法律学科の憲法ゼミで学んだ後、医師を目指して秋田大学医学部へ学士編入。医師免許取得後、2年間研修医として各科を回り、その後、法医学分野の博士号を取得した。日本形成外科学会会員、日本抗加齢医学会会員、日本医師会認定産業医。